
パワー・筋力と筋肥大のためのクラスターセット
クラスター・セットとは、セット中に休息時間を設けるセットです。例えば、6レップを連続で行う代わりに、2+2+2回に分解し、15秒のセット内休憩を設けます。
レストポーズ・トレーニングとやり方が似ていますが、目的と哲学が異なります。レストポーズは、メンツァーや ドリアンの高強度トレーニングに関連するテクニックで、限界まで追い込んで、更に最後のひと押しをさせるものですが、クラスターセットはそのようなものではありません。
クラスターセットは、より少ない疲労で、よりボリュームを増やす方法です。スポーツ科学の第一人者であるグレッグ・ハフ博士によると、セット内の休息インターバル中にクレアチンリン酸の一部が補充され、それがパフォーマンスの向上に反映されるようです。
クラスター・セットの主な利点は、高重量でも、フォームを改善できるということがあります。歴史的には、クラスターセットは、エリートウェイトリフター達によって開発されたものです。スナッチとクリーン&ジャークで要求される、高い技術的な熟練を得るためには、身体を疲弊させすぎることは不文律なのです。
筋紡錘とゴルジ腱器官は、私たちの筋肉についているセンサーで、どれくらいの重さを持ち上げられるか、どれくらいの身体的ストレスをかけられるかを制御しています。これらのセンサーは、刺激が重すぎたり、体に負担がかかったりすると働き、筋断裂や靭帯断裂を防ぎますが、運動神経の鈍い人や、神経系の未発達な初心者は、センサーが働く時期が早くなりすぎるのです。クラスター・セットは、才能に恵まれていない者や経験の浅いアスリートにも、神経系の強化を可能にする素晴らしい方法の一つと言えるでしょう。
パワーリフターのような筋力が重要な競技者にもクラスタートレーニングは有効です。筋力向上のためのトレーニングでは、負荷強度をより重視します。クラスター・セットでは、1回のトレーニングで最大に近い反復をより多く行うことができます。デッドリフトを8レップのストレートセットで行う場合、例えば1RMの75パーセントでしか挙げることができません。しかし、このセットを2レップずつ4つのクラスターに分けると、同じ量の全体的なボリュームで、1RMの90%近くを使うことができます。
クラスター・セットでは、同じ重量でより多くのレップ数をこなすこと、あるいは同じレップ数をより多くの重量でこなすことで、プラトー(停滞期)を乗り越えることができるかもしれません。そのため、クラスターセットはパワーリフターの間で人気のトレーニング法です。
また、エビデンスは、筋肥大のためには、トレーニング全体のボリュームを増やすことが重要であることを示しています。クラスタートレーニングは、筋肥大のために総ボリュームを増やす手段として有用です。
クラスターセットのセット内休憩は、どの程度とればいいのでしょうか。パワーが目的の場合は、15~30秒の休息、筋力が目的の場合は、10~30秒の休息、筋肥大が目的の場合は、10~20秒の休息を目安としましょう。あくまで一般的な指標です。しかし、一分以上とってしまうと、それはセット内休憩ではなくなります。
強度はどの程度にすればいいのでしょうか。パワーが目的の場合は、1RMの90%以上、筋力が目的の場合は、1RMの75~85%、筋肥大が目的の場合は、1RMの70~80%です。あくまで一般的な指標です。
ウェイトのアンラッキング自体も、次のレップに必要な体力やエネルギーを消耗します。ですから、クラスターセットには、ベンチプレスやスクワットのようなリラッキングを必要とするものより、デッドリフトやマシンのような、リラッキングを必要としないものの方が導入しやすいでしょう。しかし、ベンチプレスでクラスターセットを使ってはいけないというわけではありません。
スポーツ科学者のジェームス・リネカー氏による解説
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